2025/09/08公開
高速衝突解析をHAKAIでやってみる
この記事では、高速衝突解析をFEM動的陽解法フリーソフト(オープンソース)である「HAKAI」を使用して行ってみます。
この解析はAbaqusドキュメントのウェブサイトに載っているものです。
ABAQUS Example Problems Manual (v6.6)
タイトルは “Eroding projectile impacting eroding plate”となっています。
この例題では円柱形状の発射体を速度2000m/sで斜めから装甲平板へと衝突させています。
解析の詳細についてはウェブページをご参照ください。
Abaqusを使用せずに解析を行うには?
では、Abaqusや他の商用ソフトを使用せずにどのようにして解析を行うかを考えてみましょう。
以下の3つの工程を実行できるソフトが必要となります。
1. モデル作成とメッシュ生成(前処理)
2. ソルバー
3. 解析結果を表示(後処理)
モデル作成とメッシュ生成には、シンプルなメッシュ生成プログラムを使用する事にします。
この解析では、発射体と装甲平板の2つのメッシュモデルが必要です。
発射体パートには円柱形状のメッシュモデルが必要です。
そこで、”abaqus_cylinder_inp.m”というMatlab言語で書かれたシンプルなメッシュ生成コードを使います。
abaqus-tool/abaqus_cylinder_inp.m
上のGitHubリンクからダウンロードできます。
このプログラムにより、円柱形状のサイズとメッシュ分割数を入力するだけで節点と要素のデータを得る事ができます。
同様にして装甲平板パートには、平板形状のメッシュ生成プログラムの“abaqus_plate_inp.m”を使用します。
abaqus-tool/abaqus_plate_inp.m
これによって節点、要素、固定境界条件のデータを得る事ができます。
これでモデルの節点と要素のデータはそろったので、あとは他の解析条件(材料特性、初期速度、境界条件、時間ステップなど)を手動で入力してAbaqusのinpファイルを作成する事ができます。
次にソルバーについては簡易的なFEM動的陽解法ソルバーの”HAKAI”を使う事にします。
HAKAIはオープンソースプログラムでGitHubからダウンロードできます。
HAKAI-fem: Simple finite element method dynamic explicit solver.
Fracture analysis by element deletions. Matlab Julia
最後に後処理の結果表示ですが、ParaViewを使います。
HAKAIの結果出力はvtkファイル形式なのでParaViewで簡単に表示する事ができます。
https://www.paraview.org/download
小規模モデルでテスト解析
では、モデル作成を行ってみましょう。
まずは節点数の少ない粗いメッシュモデルでテスト解析を行ってみます。
上で説明したメッシュツールを使用して下図のようなモデルを作成しました。

対称モデルではなくフルモデルを使用します。
理由は、HAKAIソルバーには対象境界条件の設定機能がないからです。
上図にあるように材料特性や解析時間ステップを設定しました。
このモデルのinpファイルはこちらからダウンロードできます。
HAKAI-fem/HAKAI-v0.0.1/input/projectile-impact-d1mm.inp
では、解析を実行してみます。
小規模モデルの解析結果

上の図は各解析時間における変形の様子を示しています。
上段はAbaqusドキュメントページにある結果で下段はHAKAIソルバーによる結果です。
大まかな傾向としては良い一致が得られていると思います。
大規模モデルで解析
では、メッシュを細かくしてやってみます。
メッシュツールにて分割数の引数を大きくして、下図のようなモデルを作成しました。

かなり細かくメッシュを切りましたが、Abaqus例題はさらに1/2のメッシュサイズとなっています。
私のPC性能の限界のためこのモデルで解析を行いたいと思います。
このモデルのinpファイルはこちらからダウンロードできます。
HAKAI-fem/HAKAI-v0.0.1/input/projectile-impact-d02mm.inp
では、解析を実行してみましょう。
大規模モデルの解析結果

先ほどと同様に、各解析時間における変形の様子を見てみます。
なかなか良い一致が得られているのではないでしょうか。
要素の破壊のタイミングに差が見られます。
理由としてはHAKAIソルバーでは、接触アルゴリズムや材料特性の定義においていくつかの簡易表現を用いているからだと思われます。
オープンソースのフリーソフトで約50,000節点の解析が容易に実行できて、これくらいの結果が得られれば十分ではないでしょうか。
変形の様子の動画をこちらから見る事ができます。
以上です。
